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土田浩翔プロ 特別書き下ろしコラム
14人の師

土田浩翔(つちだ こうしょう)
第11、22期鳳凰位・第22、23期十段位、第26期王位/他多数
著書「土田流麻雀 仕掛けを極める」
「最強麻雀土田システム」
「麻雀が強くなるトイツ理論」

第十五打「見逃しを味わい尽くす」 2014/2/14

ヤミテンであれリーチであれ、アガり牌に〈見逃し〉をかけることは、あまり歓迎されていないようです。

それはどうしてか?

〈見逃し〉をかけると、その〈見逃し〉をかけた相手にアガり返されてしまうケースが多いことと、一牌のあと先で雌雄を決するゲームゆえ、そんな悠長なことは許されることはないと考えるからです。

もっともな考え方だと思います。

でも私は、〈見逃し〉をかけてしまうヘソ曲がりな打ち手なのです。

東1局や東2局で、次のようなテンパイが入ったとします。

四萬五萬九萬九萬一筒二筒三筒四筒五筒六筒六索七索八索二索ドラ

テンパイは6巡目です。

8巡目に六萬、9巡目に三萬が出てきましたが、私はロンをかけません。

もちろん、親が一色模様で仕掛けているとか、すでに他家からリーチがかかっているとか、そんな煮詰まった局面であれば、さすがに〈見逃し〉はかけられません。

でもそんな逼迫した状況でないかぎり、東1局や東2局という開局直後に『ピンフのみ』のテンパイが入ったときは、できるかぎりロンをかけず、ツモってアガるようにしています。

「え?!それは何故?」と思われるでしょうが、これは私の信条で、『開局直後のピンフのみテンパイをロンしてしまうと、その1戦が不自由な戦いになる』と考えているからです。

いうまでもなく、ロンは他力、ツモは自力のアガり方です。

できうるならば、和了すべてを自力ツモで決めたいと思ってしまうのは、私だけのエゴイズムではないはずです。

でもそんなワガママが通用するほど麻雀は簡単なゲームではありませんから、道中、渋々「ロン」と言って他力本願でアガってしまう局も作らざるを得ません。

だからこそ、開局直後のフラットな局面では、ピンフのみの手はロン和了しないようにしているんです。

『麻雀はピンフに始まりピンフに終わる』と古くから言われてきています。

基本中の基本役であり、打ち手の原点となる手役ですから、是非とも自力で完成させてゲームの流れの中に入っていきたいと考えているのです。

高め安めの無いピンフのみの手をリーチしない信条の私としましては、その信条の背景にある『麻雀とは何か?』という大命題に向き合う答えのひとつとして、私の麻雀哲学を卓上で貫くために、開局直後のピンフのみの手には、極力「ロン」の声をかけないようにしているのです。

それでは次の手牌をご覧ください。

一萬二萬三萬八萬八萬二筒三筒四筒二索三索四索六索七索四筒ドラ

東3局東家7巡目にテンパイしました。

持ち点は▲2000点。即リーチに打って出る打ち手は多いはずです。

一番の理由は、『親だから、子の足止めをしつつ、時間を稼ぎながら2600オールや裏を乗せての4000オールを狙っていく』というものでしょう。

でもこの手牌、私はリーチをかけないことが多く、しかもテンパイ後は〈見逃し〉をかけてしまいます。

連荘至上主義者には理解不能かもしれないでしょうが、『育てていく』ということを麻雀と向き合う大きなテーマに掲げている私にとって、ワンズの並びの一萬二萬三萬がどうしても気になってしまうのです。

三色同順という手役は、赤入り一発裏ドラ麻雀ではもはや偶然役としてしか捉えてない時代にあって、一萬四萬の三色手替わり待ちをするなんて、いかにも昭和を感じさせるレトロ感たっぷりの打ち方に見えるかもしれません。

でも『手牌を育て、河を育て、心を育て、己自身を育てていく』という信条で打っている身としましては、至極当然のヤミテン策なのであります。

そして〈見逃し〉。

〈見逃し〉をかけると、そのたびに連荘できる可能性が遠のいていくのは事実です。

極めてリスキーな選択をするわけですが、ものには加減というものがあります。

昔から『手替わり3巡』と言われているように、7巡目テンパイを果たした手牌ですから、一萬四萬の三色手替わりを待つのも、せいぜい10巡目あたりまでと決めておいて、それでも替わらなかったらリーチをかけます。

つまり、7巡目のテンパイ直後から10巡目までに出てくる五索八索にはロンをかけないということです。

もちろん例外はつきものですから、急を要する事態になったら、ヤミテンのままロンをかけることになります。

育てるための〈見逃し〉ということでは、次のような手牌にも適用します。

二萬二萬五萬五萬赤五萬七筒八筒九筒一索一索北北北八索ドラ

東4局の南家が7巡目にこの手牌でリーチをかけました。

南家は東2局にマンガンをアガっていて、+7000点でこの局を迎えています。

リーチをかけて2巡後、西家から生牌の二萬が出てきました。

「ロン」と声をかければ、裏が乗らなくても3200点。

それでも私は〈見逃し〉をかけることがあります。

ヤミテン時の〈見逃し〉ならいざ知らず、リーチ後の〈見逃し〉は、以後のロンをかけられないため、危険きわまりない行為になります。

たかが三暗刻狙いのため?と思われるかもしれませんが、ツモり三暗刻リーチは、文字通りツモアガりしなくては手役の付かない珍しいタイプですから、そのチャンスをフイにする「ロン」は、自分で自分の首を締めかねないアガり方に思えてしまうんです。

バカでしょう。

でも…1枚目の二萬に〈見逃し〉をかけても、残り2〜3枚あるアガり牌を自力で引き寄せ、三暗刻を完成させる醍醐味はアンコ好きな私にはこたえられない喜びなのです。

七対子もそうなのですが、シュンツ型ではない『縦型手牌』に関しては、ツモアガってナンボ!!の世界だと私は思っています。

一萬一萬一萬六萬六萬五筒五筒赤五筒三索三索三索中中二筒ドラ

南1局の親です。

10巡目にテンパイしてリーチをかけました。(持ち点は▲4000)

ロンアガりでもインパチでトップ目に立てる大物手。

六萬中も生牌という状況で、12巡目、ラス目の西家から六萬が打ち出されました。

まさか…〈見逃し〉をかける私。

バカでしょう。

でも…ツモったら四暗刻が完成する手牌については、『究極の見逃し』ができるのも麻雀の醍醐味のひとつではないでしょうか。

テンパイしてアガり牌が出てきたら、「ロン」するのが当たり前だと思う打ち手になるのは簡単です。

でも「ロン」と言わずに〈見逃し〉をかける打ち手になるには、それなりの覚悟と勇気と冒険心が必要となります。

年齢?問いません。

性別?問いません。

キャリア?問いません。

〈見逃し〉をかけるのは自由です。

たまにはチャレンジして、その楽しさや痛快感を味わってみてはいかがでしょうか!

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